OCEAN DOCKYARD  ~1/200 model ship builder~
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微笑みの国が見た悪夢~コーチャン島沖海戦その2~
さて、微笑みの国が見た悪夢~コーチャン島沖海戦その2~を始めるでやんすよ~♪

ところで、タイは「微笑みの国」なんていわれてますけど、おいらが16年くらい前に数カ月間旅して回ってた頃は、外国人に微笑んでくれるのは怪しげなポン引きのおっさん達のみで、路上一杯に邪悪な微笑みが咲き乱れておりましたが今はどうなんすかねぇ・・・。

そんな話はさておき、おいらコーチャン島沖海戦でボコられたのはタイの第二戦隊のみであったという説に、ちょっと異論があるんですわ。
ネットで当海戦について調べてみると、諸説あるのが第一戦隊の旗艦であった「スリ・アユタヤ」の行動についてです。このお船は「トンブリ」と同型艦で、日本の神戸川崎重工謹製の海防艦であります。

で、この「スリ・アユタヤ」。日本ではほぼ唯一と思われる、コーチャン島沖海戦についての文献である木俣滋郎著「撃沈戦記」の「タイ海防艦トンブリ」の項においては、その1に書いた通り、戦闘海域に到着した頃には後の祭りであったと書かれているのですが、どうも怪しい。

ネットにおける諸説とは大まかに区分すると以下の3パターンがあります。
1.定説のとおり「スリ・アユタヤ」は出撃したが海戦に間に合わなかった説
2.そもそも、「スリ・アユタヤ」は出撃すらしていなかった説
3.じつは密かに「トンブリ」もろとも撃破されちゃった説

で、1説の拠り所となっていると思われる「撃沈戦記」を丁寧に読みこむと、恐るべき疑惑が浮かび上がってくるのであります!
それでは、「撃沈戦記」の記載を要約して時系列順に追ってみましょう。

まずは、タイ側の主な編成についてです。

【第一戦隊】
海防艦「スリ・アユタヤ」、水雷艇「トラッド」、「ブケット」、「スラシッタ」、漁業保護艇一隻

【第二戦隊】
海防艦「トンブリ」、水雷艇「ソンクラ」、「チョンブリ」、「ラヨン」、敷設艇及び漁業保護艇一隻

で、いよいよ戦闘経過。

①0625:フランス艦隊が戦闘海域に突入し、タイ第二戦隊所属の水雷艇「ソンクラ」と「チョンブリ」を発見。ただちにフランス艦隊の旗艦「ラモット・ピケ」が砲撃を開始して二隻を大破炎上に追い込む。後に後続の通報艦の砲撃により撃沈。

②0630:朝靄で良く見えないけど、何かがいそうなので「ラモット・ピケ」が魚雷三発を発射。二発は陸地に当たったようだが、一発は明らかに船体への命中音を確認。

③0625~0635:「ソンクラ」と「チョンブリ」が撃破された後、タイ水雷艇「トラッド」が戦場に出現。しかし、これもまた「ラモット・ピケ」の砲撃により大破に追い込まれる。

④0645:海防艦「トンブリ」が戦闘海域に出現。距離12000メートルからフランス艦隊に対して砲撃を開始。

⑤0713~0717:フランス通報艦「アミラル・シャルネ」に「トンブリ」の巨弾が集中し危険な状況となる。しかし、「トンブリ」にもフランス艦隊からの砲撃が次々と命中し、艦橋付近に火災が発生。発令所がやられて射撃能力が低下。また浸水によって右舷に傾斜し始める。
追撃中の「ラモット・ピケ」が浅く座礁し、「トンブリ」からの砲撃が集中し始める。

⑥0805:フランス艦隊は、これ以上の深追いは危険と判断して引き揚げを開始。

⑦0858と0940:タイ航空機が2回に渡り帰投中のフランス艦隊を空襲するも、命中弾は無し。

以上、原文は全体的な文章の印象から察するに、フランス側の記録を基にして書いたものと思われます。

そしていよいよ、重箱の隅をつっつく検証スタート!

まずは③のタイ水雷艇「トラッド」についてですが、冒頭の編成上では「スリ・アユタヤ」率いる第一戦隊に所属と記載されていますが、この部分の文章では「トラッド」は第一、第二どちらの戦隊にも所属していない船と書かれており、明らかな矛盾が生じています。

また、気になるのは②における「ラモット・ピケ」が発射した魚雷の命中音です。「明らかに船体への命中音を確認」とのことですが、この時点で撃破された水雷艇は、いずれもフランス側の砲撃によるものであり、もし500t未満の水雷艇に魚雷が命中しようものなら、木端微塵に吹き飛んでいることでしょう。
しかし、別の資料でトラッド級全体の損失記録を調べてみても、「ソンクラ」と「チョンブリ」以外の損失艦は見当たりません。

最大の謎・・・

一体、この魚雷に誰がやられたんだ?

さて、ここでこんな興味深いHPを御紹介いたします。
この「日本タイ協会」様のHPには、日本製の艦であった潜水艦やトンブリ等の艦艇についての記録が紹介されており、そこには「スリ・アユタヤ」が当海戦において大破に近い状態で戦線を離脱した後、日本に回航されて修理された旨が記載されています。




・・・・ってことは、魚雷が命中した謎の船って・・・・



「スリ・アユタヤ」お前か~っ!


そう、戦闘には間に合わなかったとされているタイ第一戦隊は、実はフランス艦隊が殴りこんできた時に戦闘海域に存在しており、開幕魚雷でまさかの旗艦大破撤退、お供の水雷艇の一隻も秒殺されちまったという、まさに戦隊まるごと出落ちともいえる状態だった可能性が浮かび上がります。

おいらが考えるに、ちょうどタイ艦隊は哨戒任務の交代もしくは決戦の為に第一、第二戦隊が集結したその瞬間に、運悪くフランス艦隊の襲撃を受けてしまったのではないかと。そう考えると、第一戦隊の水雷艇「トラッド」が戦場に存在していたことも矛盾しないんですよね。

もし、それが事実だとすると、フランス艦隊の旗艦「ラモット・ピケ」は、水雷艇三隻を砲撃で撃破(後に二隻沈没)、「スリ・アユタヤ」を雷撃で撃破、とどめに「トンブリ」も砲撃で撃破(後に転覆沈没)、というシャア大佐もびっくりな超エースっぷりを発揮したことになります。流石はおフランスの旗艦だぁっ!

そう、まさにラモット・ピケ無双!

なんだかもう、タイ艦隊がほんとに一方的にやられまくった印象ですが(事実そうなんだけど)、「撃沈戦記」に記載されているように、タイ艦隊の戦いっぷりは、炎上する水雷艇が最後まで砲撃を続けていたり、トンブリの単艦による粘り強い砲撃戦等、フランスも認めざるを得ないほどに勇敢であったそうです。

参加艦艇の隻数だけ見ると、軽巡1隻+通報艦4隻のフランス艦隊 VS 20センチ砲搭載の海防艦2隻+水雷艇6隻のタイ艦隊の戦いは、一見好カードに見えますが、船の大きさを示す排水量の合計で見ると、フランス側の合計排水量15.838tに対してタイ側の合計排水量は7.350tであり、2倍以上の体格差であったことが分かります。

だがしかし!だがしかし!巨砲と魚雷による一発逆転の可能性も十分にあったタイ艦隊は、まさに男の浪漫を追求したような編成であり、せめて一発でもいいからフランス艦隊にヒットさせていればなぁと思うのはおいらだけではないはずだ。

今宵は、勇戦敢闘の末、男の浪漫と共に沈んだタイ艦隊に献杯を捧げようと思いまふ。
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コメント
コメント
シャア
当たらなければどうということはない
2015/10/09(金) 23:36:37 | URL | すま #- [ 編集 ]
よく資料を読み解かれましたね、すげ~~!
新解釈なかなか納得な内容で面白かったです!!

最近World of warshipsで遊んでるんですが、やっぱ巨砲より速射で弾打ち込まれると辛いっす
私はギャンブラー的な一撃必殺好きなので、この海戦もタイに勝って欲しかったんですが残念でしたねえ。。。。くやしいナ。
2015/10/10(土) 03:48:00 | URL | ふぢさわてつや #- [ 編集 ]
Re: シャア
> すまさん
まさに、フランス艦隊はその言葉通りだったようで、作戦前に最も警戒されていたのは、トンブリ級の20センチ砲でもなく、ましてやトラッド級の魚雷でもなく、海図の不備なシャム湾の浅瀬だったそうです(泣)
2015/10/10(土) 22:23:57 | URL | azuken #- [ 編集 ]
Re: タイトルなし
> ふぢさわさん
真実は闇の中ですが、タイ側の記録があまり日本で知られていないのは、ひとえにミミズの這ったようなタイ語を読める日本人が少ないからという理由だけだと思います。

私も最近World of warshipsやりだしましたが、操船難しすぎ!砲撃しながら魚雷を撃つなんて、人間の所業じゃないっすね!
2015/10/10(土) 22:26:57 | URL | azuken #- [ 編集 ]
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