OCEAN DOCKYARD  ~1/200 model ship builder~
1/200スケールでラジコン船を製作しています。
ドールマン提督の憂鬱 其の2
さて,前回に引き続き,ドールマン提督&ABDA艦隊の戦いをフィーチャーしていきます。

第一ラウンドは,1940年2月4日。マッカッサル沖に日本の侵攻船団在りとの報(ガセネタ)を受けたドールマン提督が,軽巡デロイテル,同トロンプ,同マーブルヘッド,重巡ヒューストン,駆逐艦7隻を率いて迎撃に向かったところ,日本海軍の陸攻部隊60機に襲われて発生した。
艦隊は回避運動を繰り返すも,マーブルヘッドが艦尾に爆撃を受けて撃破され,ヒューストンも第3砲塔を破壊されてしまい,ドールマン提督は攻撃を断念して自陣コーナーに引き上げたのである。
しかし,ヒューストンの砲塔破壊は,この後ドールマン提督にとって痛恨のボディーブローのようにじわじわと効いてくることになる。

第二ラウンドは2月20日,バリ島沖で発生した。
ドールマン提督はバリ島攻略船団を攻撃するために,デ・ロイテル,ジャワ,駆逐艦三隻からなる部隊と,トロンプと駆逐艦4隻からなる2部隊でバドゥン海峡に向かった。
ABDA艦隊を発見した船団護衛の駆逐艦,朝潮と大潮は直ちに攻撃を開始。対するドールマンが狙うのは,兵隊をたっぷりと詰め込んだ攻略船団なので,巡洋艦2隻は船団を求めて沖合をうろつき回っていた。
護衛の駆逐艦は,狂犬みたいに噛み付いてくる日本駆逐艦の魚雷攻撃によってピートハインが撃沈されてしまい撤退。
後続のトロンプ率いる第二部隊が,日本側の増援駆逐艦2隻を含めた4隻と戦うも,両者沈没艦のないままに引き揚げた。この戦いでは,何と旗艦デ・ロイテルは一発も主砲を発射していなかった。

ドールマンは帰還後,おそらくヘルフリッヒ提督に,あの手この手で,う~~~~~~~~んとしぼられたに違いない。

いよいよ,運命の第三ラウンド。日本軍はいよいよ蘭領東インドの総本山にして,連合軍最後の砦となったジャワ島に上陸を仕掛けてくることになった。
その数,輸送船40隻に護衛艦艇を加えると67隻という大船団であった。
これには,いくら覚悟を決めたヘルフリッヒ提督といえども,ピリピリし過ぎていたようだ。
敵侵攻船団発見の報に際し,艦隊を早めに出撃させてしまった。彼らは二日間も血眼になって敵船団を探し回り,戦う前からへとへとになってしまったのだ。

ドールマンからの「僕たち疲れたから,一旦スラバヤに帰るね」という電報に,ヘルフリッヒは大激怒!「敵を撃破するまで帰ってくるな!」と突き放すも,ドールマンは「いやじゃも~ん」と知らんぷりを決め込んでスラバヤに戻りつつあった。

ところが,ドールマンのもとに「今度はホントのホントに侵攻船団を発見!」との報が飛び込んできたのである。

ここに至ってドールマン提督も腹をくくり,スラバヤ帰還を目前にして未練たっぷりの米・英・豪の艦艇を引き連れ,艦隊進路を敵船団に向けて進撃を開始した。

このABDA艦隊の珍妙な行ったり来たりは,重巡那智の索敵機により逐一報告されており,第五戦隊司令部を「一体こいつらは何をしとるんだ?」と激しく戸惑わせたに違いない。

そして,ついに両軍はスラバヤ沖にて激突する!

この時のABDA艦隊はデ・ロイテルを旗艦にして,重巡ヒューストン,エクセター,軽巡パース,ジャワに駆逐艦9隻という陣容。エクセターは,大漁旗のように巨大な戦闘旗をマストに翻しながら進撃したという。

対する日本艦隊は,第五戦隊の重巡那智,羽黒を中心とした巡洋艦4隻,駆逐艦14隻という兵力であった。

一見,拮抗した兵力に見えるが,いつも通りのガセネタにより出撃させられたABDA艦隊は,夜戦を想定していたので搭載機を全て降ろしており,当然陸上機によるエアカバーも望むべくは無かった。
おまけに,一番やっかいなのは通信で,4カ国の寄せ集め艦隊では暗号の翻訳にも時間がかかるし,当然誤訳も発生する。一番最後に通信を受け取るアメリカの駆逐艦では,毎回訳のわからない命令文が届いて,艦長達の血圧をいたずらに上昇させていた。

たとえば,ドールマンが「右へ回頭し,敵の駆逐艦を攻撃せよ!」と命令しても,最後の艦長が受け取る通信は「憎い小娘の右足の小指をしゃぶれ!」とかいう内容になり,アメリカ駆逐艦の艦橋では,命令が届いたらまずは爆笑,その後激怒!という,極めてアンビバレントな精神状態で戦いに臨んだものと思われる。

こんな伝言ゲームみたいな通信で,戦闘指揮をとらされたドールマンも可哀そうといえば,可哀そうだ。

でも,こんな戦いに付き合わされた米・英・豪の水兵さんたちの方が,もっともっと可哀そうだ。

そんな喜劇的,いや悲劇的な状況ではあったが,序盤は双方が遠距離で撃ち合ったので,お互いに有効弾を与えることはできなかった。
ドールマン提督にとって痛かったのは,射撃優秀賞を取るほどの精度を誇ったヒューストンの主砲が,ジャワ沖海戦で故障しており,砲力が2/3に低下してしまっていた事であろう。にもかかわらず,ヒューストンは駆逐艦が展開した煙幕から時折顔を出しては正確な射撃を撃ち込み,日本の水雷戦隊の接近を許さなかった。

事態が動いたのは,羽黒の砲弾がエクセターの缶室を破壊し,速力を低下させてからだ。
単縦陣の隊列を維持できなくなったエクセターが,非敵側に変進すると,後続艦もエクセターに続いて変進してしまった。
鼻息荒く先頭を走っていたデ・ロイテルは,突然ひとりぼっちにされて大慌て!
そこに運悪く,羽黒が放った酸素魚雷が殺到して駆逐艦コルテノールを爆沈させてしまった。
ドールマン提督は,形勢不利と見て一旦戦場を離脱する。

ABDA艦隊は態勢を立て直した後,船団を求めて進撃を再開し,あたりを徘徊しているうちに,のんびりと水偵を収容中の那智と羽黒を発見した。

「すわ好機到来」と両艦に襲いかかったが,田中頼三少将率いる第二水雷戦隊の「ちょっと待った突撃」により,命中弾を得ることができずに両艦を取り逃がしてしまった。

その後,戦力が激減したABDA艦隊は,ジャワ島の島影に隠れて進撃し,一気に日本船団へ突入しようと意図していた。
しかし,ここでも運悪く,味方が知らないうちに敷設した機雷に引っ掛かり,護衛の駆逐艦が沈没。
普通の提督なら,ここで戦意を喪失しそうなものだが,後の無いドールマンの辞書に「撤退」の二文字は存在しなかった。
いや,それよりも,おめおめと帰りでもしたら,ヘルフリッヒ提督の大目玉を食らうことがそんなにも恐ろしかったのだろうか。

プレッシャーのみで,ここまでドールマンを追い込むとは。


ヘルフリッヒ提督おそるべし・・・


一体どんだけ怖いおっさんだったんだ!?

名前に「ヘル」って付くくらいなんだから,きっと相当な恐ろしさだったのでしょう。

船団撃滅の念に取りつかれたABDA艦隊,いやドールマン艦隊は,護衛駆逐艦がいなくなってしまったにも関わらず,進撃を止めなかった。
午前零時40分,両軍は再度激突!距離12000メートルで砲戦を再開した。この時,那智と羽黒は密かに必殺の酸素魚雷も発射。これに気がつかなかったドールマン艦隊は,回避運動を行えずにデ・ロイテルとジャワに魚雷が命中。
勇敢なオランダ軍の巡洋艦は,二隻ともあっという間に沈没して果てた。
ドールマン提督の最後の命令には諸説あるが,以下の命令が一番有名であろう。


「ヒューストン及びパースは,我が生存者にかまわずバタビアへ待避せよ by ドールマン」


やっぱり,これ以上オランダの戦いに外国人を付き合わせちゃ可哀そうと思ったのでしょうか・・・。


ところで,ドールマンを追い込みまくった名?セコンドのヘルフリッヒ提督ですが,調べてみたらこんな人でした。
Helfrich.jpg

え!?見た感じあんまし凶悪じゃないんすけど・・・
こ,この脱力系のおっちゃんが,あのヘルフリッヒさんですか。
でも,人は見かけによらないと申します。部下を叱責する際には,水攻めとか木馬攻めにするとか,とんでもないドSっぷりを発揮したのかもしれません。

それはさておき,このお方。
陥落寸前のジャワ島からまんまとセイロン島に逃げ延び,戦艦ミズーリ上での日本降伏文書調印式には,オランダ女王の代理として出席しております。

やっぱし,ただのプチ★メタボなおっさんではなかったようです。

と,いうわけで,ドールマン提督が戦った真の敵とは,連合を形成する国家間の意識のズレであったり,上司のプレッシャーだったり,まるで数年後に日本の兵隊たちを苦しめたものが,アメリカ軍ではなくて,日本軍に内在していた諸問題であったのと同じ構造のような気がします。

やっぱり,戦争はするもんじゃありませんね。

ともあれ,今夜は,勇敢に戦ったドールマン提督とABDA艦隊の闘志に乾杯!



ドールマン提督の憂鬱 完
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テーマ:軍事と兵器 - ジャンル:趣味・実用

コメント
コメント
楽しく読ませていただきました。
戦場では、何が起きるかわからない。紳士的なおじさんとメタボなオヤジ。人は、見た目で判断できない。ですね。上が変だと、付き合う方はやってられないのは、軍隊も会社も一緒ですね。
2012/01/13(金) 00:25:57 | URL | naruchan #- [ 編集 ]
Re: 楽しく読ませていただきました。
>naruchanさん
こんなにも怪しげなブログに,いつもお寄り頂きありがとうございます。
ドールマンはけっこう知名度があるかもしれませんが,今回調べてみて,
ヘルフリッヒという黒幕の存在を知ることが出来てよかったなあと思っています。
少しずつ,デ・ロイテルに対する愛情がわいて来ました。
2012/01/13(金) 21:22:18 | URL | azu ken #- [ 編集 ]
そういう黒幕がいたのですね~
ちゃっかし生き残っているヘルフリッヒ提督、知らなかったっす

まー混成艦隊ってタイヘンでしょうね
色々なエピソード、私もますますドールマンさんが好きになりましたよ

さ、週末は製作頑張りますよ~!
2012/01/13(金) 21:41:15 | URL | ふぢさわてつや #- [ 編集 ]
Re: そういう黒幕がいたのですね~
> ふぢさわさん
ドールマン提督は,よく言われているように無能な猪武者ではなく,
あの状況では,ああするしか他に道が無かったような気がします。
しかも,スラバヤ沖の海戦では,実は輸送船団まであと一歩のところまで攻め込んでいたようで,
日本側も冷や冷やだったと思われます。

けっこう頑張っていたんですねABDA艦隊!
やはり我々の手で,1/200スケールで復活させてやらねばなりませんね。
私も今日は頑張って船体作ります。
2012/01/14(土) 08:40:15 | URL | azuken #- [ 編集 ]
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